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お別れどき

 物が捨てられない人の話をよく聞きますが私はその逆で、さっきまで着ていた服でも、あ、もう着ないな、と思ったら脱いでそのままゴミ箱に入れてしまうタイプです。

 

 そんな私が、「これ汚いから捨てなよ」と家族に責められても使い続けてきたのがこのコーヒードリッパー。同居していた実家の祖母が使っていたもので、私が結婚する時に、すでに寝たきりになっていた祖母に頼んでもらってきました。少なくとも40年は使われているうちにシミも欠けもでき、貫禄十分。

 

 今も同じ形が売られている、何の変哲もないドリッパー。数年前に長男が取っ手を割ってしまい、「買い換えたい」というものを無理やり直させて使っていました。祖母が使っていたものだから、と思うと捨てることができませんでした。
 昨日コーヒーを入れてポットから外そうとしたら、ポロリと取っ手が取れました。長引く梅雨の湿気で接着剤が緩んでいたのかな。不思議なことに、直そうという気持ちが全く起きませんでした。孫娘が生まれたからかな。もう私がおばあちゃんだからかな。
 新しい歯が生えるとき古い歯が抜け落ちていくように、このドリッパーとお別れする時がようやくやってきました。